vol.666【実践コラム】夏の資金繰りについて

…賞与・仕入れ増に備えて、今から先手を打つことが大切です。
(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広
夏場にかけて、資金繰りに注意が必要となる企業が少なくありません。特に6月から8月は、夏季賞与や季節商品の仕入れなど、キャッシュアウトの要因が重なりやすい時期です。現金の流れが一時的に偏ることで、資金のやり繰りに不安を感じる経営者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
売上が上がっている企業でも油断は禁物です。仕入れや人件費といった支出が先行すると、「黒字のはずなのにお金が足りない」という“資金繰り赤字”が発生します。こうした問題の多くは、「事前にわかっていた支出」に対応できなかったことが原因です。
資金繰りの本質は、“困ったとき”ではなく、“困る前”に動けるかどうかです。数ヶ月先までのキャッシュフローを見える化し、計画的に資金を整える。それが、財務の強さを決める分かれ道になります。
たとえば、夏季賞与は毎年発生する定例支出です。そうであれば、これに合わせた運転資金の調達は、経営のリスク管理そのものです。早めに銀行に相談することで、必要な資金をスムーズに準備できますし、金融機関側にも好印象を与えることができます。
アパレルや食品など、季節商材を扱う企業では、春から夏にかけての在庫確保が不可欠です。こうした仕入れ先行型のビジネスでは、資金の準備が販売チャンスを逃さないための「攻めの備え」となります。
また、決算月によって納税時期は異なりますが、いずれにせよ資金繰りへの影響は大きいため、事前に納税額を把握しておくことも欠かせません。
借入について心理的な抵抗感を持つ方もいらっしゃいますが、重要なのは“借りること”ではなく“いつ・どう使うか”です。必要なときに、必要な資金を、根拠を持って動かせること。それこそが、堅実で信頼される経営のあり方ではないでしょうか。
資金繰りの山場は、危機ではなく「チャンスを整えるタイミング」と捉える。先手を打つ資金戦略で、夏をしっかり乗り切りましょう。
尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)