vol.579【実践コラム】企業のライフサイクルと銀行借入

…自身のライフサイクルを正確に評価し対処しましょう。

(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広

企業の成長や変革には資金が欠かせません。その資金調達方法の一つとして、銀行借入は多くの企業にとって最も身近な選択肢です。しかし、企業のライフサイクルに応じて、銀行借入の利用方法や条件は異なります。このコラムでは、企業のライフサイクルと銀行借入について考察します。

■ 初期のスタートアップ段階
新たなビジネスを立ち上げるスタートアップ企業にとって、資金調達は生命線です。この段階では、自己資金、日本政策金融公庫や保証協会の創業融資が主な資金源です。

■ 成長期の資金調達
スタートアップ企業が成長し、売上が増加する段階に入ると、資金需要が高まります。ただ、借入や返済の実績はまだ少ないため、黒字転換や将来の収益見込みを示すことが、銀行の審査に通るための鍵となります。また、保証人や担保の提供が求められることもあります。

■ 定着期と安定期
企業が市場で確固たる営業基盤を築き、安定的な収益を上げる段階に入ると、銀行借入の利用が一層増えます。この時点での銀行借入は、運転資金の補填や設備投資、M&A(合併・買収)など、戦略的な資金調達として重要な役割を果たします。企業の信用度が高まるため、より有利な条件で資金調達できることがあります。

■ 成熟期と後退期
企業が成熟期に入ると、新たな成長機会を見つけることが難しくなることがあります。この段階では、効率化や収益最大化が求められ、資金調達の必要性は低下する傾向があります。逆に、後退期に入る企業は、銀行借入を返済することが難しくなる可能性があるため、資金調達が困難になることがあります。

最適な銀行借入戦略を選択するために、企業は自身のライフサイクル段階を正確に評価し、資金ニーズを明確にすることが重要です。また、銀行との信頼関係を築き、資金調達のプロセスをスムーズに進めることが成功の鍵となります。企業の成長と変遷に合わせて、銀行借入を上手に活用し、持続可能なビジネスを築きましょう。

尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)