vol.485【実践コラム】グループ会社を持つ企業の資金調達について

グループ会社を持つ企業の資金調達について

…金融機関への説明のポイントを解説します。

(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広

グループ会社を持つ企業の資金調達事例です。グループの概要は下記となります。
今回、C社の資金調達をお手伝いしました。

A社:設立6期目(借入実績あり)
B社:設立4期目(借入実績あり)
C社:設立3期目(借入実績なし)

金融機関はグループ会社への新規融資を嫌います。理由は実態把握に手間がかかるためです。

グループ会社のそれぞれが全く別の事業を営んでおり、かつ、グループ間で一切の取引も無い場合は、単独の会社として融資検討をすることが可能です。しかし、大抵の場合、グループ間で営業上の取引があったり、資金の貸し借りがあったりするため、融資対象の会社だけでなく、関連するグループ会社すべての財務状況を調査しなくてはなりません。通常の会社を審査するよりも数倍の手間がかかります。

具体的には、グループ間で利益操作を行っている可能性を払拭するため、グループ合算の貸借対照表や損益計算書を作成します。すべてのグループ会社の決算月が同一であれば簡単ですが、決算月が違う場合は正確な財務状況がつかみにくくなるため、さらに作業が複雑になります。

しかし、手間をかけてグループ合算資料を作成したところで、必ず融資を出せるとは限りません。金融機関の担当者の立場で考えると、「融資案件が他にもある中で、わざわざ手間のかかる案件に関わりたくない。」というのが本音のようです。

よって、グループ会社がある会社は、金融機関の担当者に手間をかけさせないよう、会社側で説明資料を作成しておくことが重要です。

資料を作成するにあたり、金融機関が必ず知りたがるポイントは下記になります。

  • グループ合算で利益が出ているか?
  • グループ合算で債務超過となっていないか?
  • グループ間で実態のない取引を計上していないか?
  • グループ間で資金の融通がないか?

これらの疑念を払拭するためには、最低限、下記の資料を用意する必要があります。

  • グループ間の取引状況が分かる取引関係図
  • グループ合算の貸借対照表
  • グループ合算の損益計算書

C社も、これらの資料を提出することで、スムーズに新規融資を受けることができました。

資金調達が上手くいかないと感じているグループ企業の経営者様、説明資料の不足が原因かもしれません。

是非、ご相談ください。

尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)