vol.278【実践コラム】中小企業の財務強化方法(その2)

(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広


…最低でも向こう1年間の資金繰り計画を立てましょう

前回のメールマガジンでは、財務管理の強化は試算表の作成から始まることをお伝えしました。
しかし、試算表だけ作成すれば十分かと問われると、そうではありません。試算表だけでは、お金の流れが分からないためです。

赤字になってもすぐには倒産はしませんが、資金が底をつけば、黒字でも倒産します。そういう意味では、利益管理よりも資金繰り管理の方が重要です。

資金繰りの管理は、「資金繰り表」で行います。資金繰り表は、毎月の入金額と支出額を項目ごとにまとめた単純な表ですが、財務管理にとても役立ちます。

殆どの社長様は、何らかの資金繰り表を既に作成していると思います。書面では作成していなくても、頭の中にはおおよその入金額と支出額は入っているはずです。ただ、問題なのは、今月もしくは来月といった、短期間の資金繰り状況しか把握できていない方が多いという点です。

短期間の資金繰り計画しか立てていないと、「お金が足りない!」という事態が1か月ほど前にしか分かりません。1か月という時間は、資金調達を行うには決して十分な時間ではありませんので、他の大切な業務を差し置いて、優先的に資金調達に走り回らなくてはならなくなります。

行き当たりばったりの財務活動から脱却するためには、短期ではなく、向こう1年程度の「資金繰り計画」が必要です。粗々でも、1年程度先までの資金繰り計画を立て、資金の流れを予測しながら、資金調達や設備投資の計画を立てます。1年先の売上など分からないという声もお聞きしますが、過去1年間の「資金繰り実績」も作成することで、未来の売上の動きを何となく予測することはできるはずです。

財務管理の最大の目的は「資金を切らさないこと」です。試算表で利益の状況を管理するのと同時に、資金繰り表でお金の流れも管理しておけば、適切なタイミングで資金調達や設備投資ができるようになります。

尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)