vol.262【実践コラム】CLO融資について

(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広


…財務内容の良い企業にしか案内されない融資商品です

銀行の融資といえば、証書貸付が一般的です。しかし、融資の種類は他にもあります。有名なところで、売掛債権を譲渡するファクタリング、在庫等の資産を担保にするABL等がありますが、本日は、CLO融資についてご説明します。

CLOとは、Collateralized Loan Obligationの略で、金融機関が持っている貸出債権を証券にしたものです。金融機関が持つ貸出債権を証券化して投資家に売却すれば、投資家は金利収入を受け取ることができ、銀行は信用リスクを投資家に移転したうえで手数料収入を得られるというメリットがあります。

ただ、実際にCLOを発行するのは殆どが地方自治体等です。
地方自治体は、銀行にリスクのないCLOを組成して参加銀行を募り、銀行を通じて地域の中小企業に資金を提供することで、地域経済の活性化に繋がることを目的としています。

■以下は日本政策金融公庫が平成29年3月に発行したCLOの概要です。

◆CLO発行日:平成29年3月3日
◆CLO発行額:248.03億円
◆当初貸付債権総額:257.48億円
◆貸付社数:1,009社
◆地域金融機関:七十七銀行、清水銀行、但馬銀行、東日本銀行、みなと銀行、福岡中央銀行、飯能信用金庫、朝日信用金庫、西武信用金庫、諏訪信用金庫、富山信用金庫、金沢信用金庫、大阪信用金庫、大阪シティ信用金庫、姫路信用金庫、西中国信用金庫、愛媛信用金庫、長野県信用組合(計18機関)
◆A号社債134億円(AAA)  :機関投資家が購入
◆B号社債92.03億円(BBB-):日本政策金融公庫が購入
◆C号社債22億円(AA+)   :機関投資家が購入(C号社債は日本政策金融公庫が元利金を全額保証)

参加金融機関で実行された公庫のCLO融資は、リスクの度合いによってA号、B号、C号に分けられて証券化されています。信用度合いの低いB号社債については、日本政策金融公庫自身が購入しており、また、C号社債についても日本政策金融公庫が全額保証をしています。日本政策金融公庫が大きなリスクを負担していることが分かります。

「上記の金融機関と取引があるけれど、CLOの提案など受けたことがない。」という社長様もいらっしゃるかもしれません。CLOは、銀行がリスクを取っていないため、信用リスクの高い企業に対しても融資ができるのではないかと考えられがちですが、実際には反対です。優良な債権でなければ地方自治体等が大きな損失を被りますので、銀行は、財務内容が良好な融資先だけに案内をしています。

尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)