vol.247【経営コラム】創業して破たんしないために…

(毎週月曜日配信)経営編
GPC-Tax本部会長・一般社団法人銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司


○創業事業計画に対する誤解とは…
○エクイティー資金(ベンチャーキャピタルからの投資)に関する誤解とは…
○今の力に不相応な創業は総じて失敗します。

■資金余力がほとんど無い計画を立てて、その計画通りに執行すると、短期間で破たんする可能性が高くなります。

○例)
自己資金数百万円、創業融資600万円~800万円(自己資金を勘案すると、通常はこれが創業融資の限度額です。)、総事業予算約1,000万円の事業体が、この総予算をすべてつぎ込んでデスバレーを越える計画を立案した時、その売上が計画を下回れば途端に経営危機に陥ります。
自己資金数百万円、創業融資600万円~800万円、総事業予算約1,000万円の事業体は、数百万円以上の余力を残して立ち上がる計画を立案すべきです。売上の進捗が計画に対して遅れた時に、この余力資金でリカバーすることができます。

○そもそも、創業1期目に、計画通りの売上を作れるケースは稀です。極端に保守的な計画を立てれば別ですが。成功者の大半は「紆余曲折を経て、何とか事業が立ち上がった」と言っています。当初に想定した「仮説」通りに事業は立ち上がらない、この達観が必要です。

◆創業事業計画に対する誤解とは…

第20期目の会社が第21期目の計画を立案した時、その計画はよほどの冒険でもしない限り、10%も狂わないはずです。第3期目の会社が第4期目の計画を立案した時、その実現の蓋然性には、まだまだ多くの疑問が残っています。創業時に作成する創業1期目の創業事業計画書の精度は?大きな疑問が残ります。当然です。創業事業計画とはそのようなものです。それでも、大きな指針・目安として必要です。この目安とのかい離を確認しながら事業を進めるために必要です。創業事業計画書は、絶対に必要ですが、鵜呑みにしてはいけません。

■大きな自己資本を有していない創業者が大きな事業をやりたいなら、二段階、三段階で事業を成長させてください。

○例)
自己資金が数百万円の創業者は、総事業予算1,000万円程度の事業しか立ち上げることができません。まずは、この範囲で事業を軌道に乗せる計画を作って実現してください。第一ステージが軌道に乗った時、次の資金調達を行って第二ステージをクリアしましょう。このステージアップを経て、あるレベルを超えた時、エクイティー資金(社長が望むなら)の調達も視野に入ってきます。飛躍を狙うのはこのステージです。

○小資本しか持ち合わせていないが、大きな資金調達ができれば短期間で成長できる、故に資金調達を行いたい…このような考えは稀有な幸運と実力を持ち合わせたほんの一握りの人たちのみに通用する論理です。一般的ではありません。
※ベンチャーキャピタルは、将来性も当然ですが、一定以上の実績を待ち合わせた事業体に出資します。実績の無い計画書に出資するケースはほぼ無いと考えてください。

◆エクイティー資金(ベンチャーキャピタルからの投資)に関する誤解とは…

ベンチャーキャピタルは…
1.
計画書には原則出資しません。小さな成功実績に出資します。この小さな成功に、大きな資金をつぎ込むことで、時間と規模、競合との差別化を買うための出資です。
※計画書に出資する事例は、あくまでも推測ですが、日本国内で年間数例以下でしょう。
2.
短期間に大きく成長できる蓋然性が出資の条件です。イメージは、最長5年ぐらいで、純利益が数億円以上、この純利益がその後さらに大きく伸び続ける事業に出資します。

■今の力相応に創業しましょう。

大きな野望を捨てる必要はありません。望むのなら、十年後・二十年後に成し遂げればよいのです。
ただし、今は、今の力相応の事業に取り組みましょう。

○自己資金(自分の力や縁で調達できる資金)が数百万円なら、創業融資を最大限行って、総事業予算1,000万円位の事業を立ち上げましょう。まずは、このステージをクリアすることです。

○自己資金(自分の力や縁で調達できる資金)が5千万円準備できるなら、それ相応にスタートすればよいでしょう。

◆今の力に不相応な創業は総じて失敗します。

今、力がないのに大きなことをやりたい、これは間違えです。無いものねだりです。経営者としては失格です。大きなことをやりたいが、今はお金がないので、力相応の小さな成功を積み上げて、最終的には大きなことを成し遂げる、これが正解であるはずです。大きな、大き過ぎると思われる夢を捨てる必要はありません。ただ、未来の大きな夢と現実を、はっきりと区分けして創業してください。

※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、クライアントに『お金の心配をできるだけしない経営を行ってもらう』ための新しい機能(=金融機関対応を含む財務の機能)を持つことを宣言いたします。我々は、『税理士』ではなく、『新・税理士』です。遠慮なくご相談ください。

田中英司 (GPC-Tax本部会長・ 一般社団法人銀行融資プランナー協会代表理事)