vol.237【経営コラム】今の自社を、今日の自分をベンチマークしてはいけません

(毎週月曜日配信)経営編
GPC-Tax本部会長・一般社団法人銀行融資プランナー協会
代表理事 田中英司


…停滞の原因はこれです。

■A氏、B氏…Z氏に、これから飲食店を出店するとして、そのお店作りについて(イメージを)聞いてみました。
※他の業種でも同じです。読み替えて考えてください。

◆出店するお店の規模をイメージして教えてください。
A氏:「路地裏にあるカウンター席が5席と、4人掛けのテーブル席が二つの小料理屋さんです。」
B氏:「…」
Z氏:「繁華街の路面に面した100坪120席のレストランです。」

◆出店にいくら必要ですか?
A氏:「運転資金を入れて300万円ぐらいでしょうか。」
B氏:「…」
Z氏:「保証金等も含めると1億円強でしょうか。」

◆いくら位売れますか?
A氏:「月商150万円位売りたい。」
B氏:「…」
Z氏:「月商2,000万円は超えたい。」

◆利益はどれ位出ますか。
A氏:「生活費として月に30万円位は残ります。」
B氏:「…」
Z氏:「営業利益で月に200万円位は出したい。」

同じ飲食店でも、人によってイメージは百人百様です。このイメージは何から形成されているのでしょうか?

■ベンチマークとは…
人は無意識にベンチマークしています。無意識にベンチマークされたイメージを基準に、自分の将来を決めています。
A氏は、自身がイメージしたお店を作り、イメージ通りの売上と利益を目指します。
Z氏も、自身がイメージしたお店作りを目指します。イメージした売上と利益を求めます。
「人間にはイメージを実現する能力が備わっている。」偉人の名言です。その通りだと思います。

※ベンチマーク (英: benchmark) は、本来は測量において利用する水準点を示す語。転じて金融、資産運用などや株式投資における指標銘柄など、比較のために用いる指標を意味する。また、広く社会の物事のシステムのあり方や規範としての水準や基準などを意味する。(ウィキペディアより引用)

■ベンチマークする対象が重要です。
月商150万円の飲食店のオーナーが、月商500万円の新店舗を出店したいとするならば、ご自身のイメージを大きく変えねばなりません。
店作り、立地、投資、メニュー構成、オペレーション、売上、利益…すべてが既存店とは異なります。自分のイメージに頼って新店舗を開発してしまうと、限りなく月商150万円の既存店に近づいてしまいます。
ご自身を、既存店をベンチマークしてしまっているからです。

■今の自社を、今日の自分をベンチマークしてはいけません。
月商150万円の飲食店のオーナーが、月商500万円の新店舗を出店したいとするならば、今の自店、今の自分をベンチマークしてはいけません。月商500万円の店舗を見つけて、それを確実にベンチ―マークしなければなりません。

■ベンチマークすべき対象を見つけて研究を続けること、経営者の勉強すべきテーマの一つはこれです。

1.ベンチマークすべき対象を探し続けてください。見つけて ください。

2.出来る限りの情報を集めてください。
・信用情報を取り寄せて、モデル企業の収益構造を理解してください。
・上場企業なら事業内容が詳しく適時開示されています。
・コンシューマー向けの企業なら、顧客になって使ってみてください。
・できれば成長のプロセスを時系列に調べてください。
等々、
ビジネスモデルと成長のプロセスを理解することが重要です。

3.良いところを探して真似てください。
・ビジネスモデルを研究してください。
・成長のプロセスを研究してください。
・長所と弱点を自分なりに理解してください。
・良いところを取り入れてください。
※モデル企業をベンチマークする方法は、ごく一般的に行われる手法です。コンサル会社がクライアント企業の経営戦略を練るときにも活用します。

今の自社を、今日の自分をベンチマークしてはいけません。停滞してしまう大きな原因の一つはこれです。

※銀行融資プランナー協会の正会員である当事務所は、クライアントに『お金の心配をできるだけしない経営を行ってもらう』ための新しい機能(=金融機関対応を含む財務の機能)を持つことを宣言いたします。我々は、『税理士』ではなく、『新・税理士』です。遠慮なくご相談ください。

田中英司 (GPC-Tax本部会長・ 一般社団法人銀行融資プランナー協会代表理事)