vol.235【実践コラム】個人信用情報について

(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広


…個人の金融事故が法人の資金調達に与える影響を考えます

人生はいつも順調とは限りません。
誰もが、様々な事情で、個人ローンの返済やクレジットカードの支払いが滞ってしまう可能性があります。
本日は、個人の金融事故が法人の資金調達に与える影響について解説します。

そもそも、個人の信用情報はどのように管理されているのでしょうか。金融機関は、個人のお客様への融資状況を信用情報機関に登録して共有しています。主だった信用情報機関として、クレジット系の金融機関が情報を登録しているCIC、消費者金融系の金融機関が情報を登録しているJICC、銀行系の金融機関が情報を登録している全国銀行個人信用情報センターがあります。

日本政策金融公庫を例に挙げますと、借入申込書の裏面に、この3つの機関の利用および登録について承諾を得る欄があります。最近では個人情報の取扱いが厳しくなっていますので、金融機関が本人の承諾を得ずに信用情報機関に照会をかけることはありません。書面で承諾を受けた後、照会をかけてネガティブ情報の有無を確認します。

但し、金融機関が個人信用情報を照会するのは、一般的には、初めて融資取引を開始する時だけです。融資審査の都度、あるいは毎年ということではありません。

それでは、ネガティブな情報が出た場合に、法人の融資審査にどの程度影響があるのかを見てみましょう。

・現在も返済が滞っている。
→新規の融資取引は、お断りされる確率が高くなります。

・過去に返済が滞っていたようだが、先月完済済みである。
→まだ1か月しか経っていないため、もう少し様子を見たいと して、新規融資を見送られるのが一般的です。もし本当に完 全に立ち直っているのであれば、しっかりと説明して納得してもらうことで、新規融資を受けられる場合もあります。

・過去に返済が滞っていたようだが、数年前に完済済みである。
→新規融資取引をしてもらえる可能性は十分にあります。

・度々入金遅れがある。
→これだけで断られることはありませんが、財務内容や業績が良い等、マイナス面をカバーできるポジティブな材料がないと厳しくなります。

以上の事例から、事故を解決した時期により影響度合いが変わることが分かります。一度事故を起こしてしまっても、しっかりと事故を解決することができれば、数年後には信用は回復すると考えられます。

尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)