vol.232【実践コラム】リスケ中の資金調達について

(毎週木曜日配信)財務編
銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー
尾川充広


…別の銀行に全額肩代わりと新規融資を依頼するのが得策です

リスケジュール中は、原則新規融資を受けることができませんので、新規融資を受けるためには、一旦リスケジュールを解消する必要があります。

ひとつの方法として、新しい借入でリスケジュールをしている借入を一括完済するという方法がありますが、新しい借入れを申し込む金融機関は、今現在リスケジュールを依頼している金融機関ではなく、別の金融機関に依頼するのが得策です。最近取り組んだ事例をご紹介します。

■A社の事例

【借換え前】
・X銀行より約1.5億円の借入
・リスケジュールにより毎月50万円の返済

【借換え後】
・Y銀行にて1.5億円肩代わり+新規融資2,000万円を実行
・毎月返済額117万円

A社は数年前からリスケジュールをしていますが、足元の業績が回復し、年間1,000万円程度の返済が可能な状況になりました。また、受注の幅を拡げるために新たな人材を雇用したいと考えており、資金調達が必要になったことも、正常化に踏み切った要因です。

当初A社の社長様は、長年お付き合いのあったX銀行から新規融資を受けたいと考えていました。しかし、X銀行の答えは、「まずは返済を正常化して欲しい。新規融資は正常化して数か月間様子を見た後に検討したい。」というものだったようです。
正常化を行う目的は新規融資を受けることですので、もし融資を受けられなかった場合は、「正常化して返済額が増えただけ。」となってしまいます。社長様は思い悩んで弊所にご相談に来られました。

リスケジュールとは、元々の約束通りに返済ができていない状況です。銀行は約束を守ってくれなかった相手に対して、追い貸しをすることは非常に慎重になりますので、X銀行の対応は至極当然です。

ただ、おかしな話ですが、X銀行ではすぐに新規融資を検討することができなくても、X銀行以外の銀行だったらすぐに新規融資を検討することができます。他行から見れば、リスケ先ではなく、単なる新規先であるためです。これまでの経緯は関係なく、純粋に今後1.5億円+αの返済が可能と判断できれば、融資を実行することができます。

弊所にてお付き合いのあるY銀行に相談したところ、事例でご紹介した通り、15年返済の新規融資で1.5億円の肩代わりと、2,000万円の新規融資を実行してもらえました。さらに、返済を正常化したことで、日本政策金融公庫からも1,000万円の追加融資を受けることができました。

誤解のないように説明しますと、X銀行の対応が悪かったということではありません。X銀行から見れば、A社はリスケジュール中の要注意先であり、一方、Y銀行から見ればA社は1.7億円の新規見込み先です。対応が違うのは当然のことです。

金融機関にとって、リスケジュールがある先に正常化と同時に新規融資を行うことは大変困難なことです。いたずらに銀行同士の借り換え合戦をあおるつもりはありませんが、正常化と同時に資金調達を行う場合は、自社を魅力的な新規見込み先と捉えてくれる別の銀行に相談するのが得策です。

尾川充広(銀行融資プランナー協会 財務アドバイザー)